INTERVIEW【インタビュー】
隈 研吾
隈研吾氏、
「モクコンの家」を語る。
隈研吾氏による提案には、どんな想いが込められているのでしょうか。
自身が新しい設計のポイントについて語ります。
— パルコンについて、どういった印象をお持ちでしょうか。
「耐震・耐火性・遮音・断熱、そして耐久性に優れ、
コンクリート住宅の総合的な強さを感じます。」
住まいは人間の生活を守る、そして人間自身を守る非常に大事な器だと思います。そこでは何よりも安心感が求められます。大成建設ハウジングが手掛けるパルコンは、コンクリート住宅ならではの耐震性が安心感につながり、安らぎという家の基本的な条件を満たしていると考えます。またよく知られているように耐火性、防音・遮音、断熱・気密など、他にも優れたポイントがたくさんあり、さらに劣化に強く耐久性がある点は、まさにサステナビリティという時代の要請にも応えていると思います。
いま、コロナ禍を経て住宅の役割が増えたと感じています。これまで家は社会とは切り離された場という位置づけでしたが、社会と個人の接点として住宅が意識されるようになりました。仕事をする場所、人と集う場所、クリエイティブな場としての機能が求められます。そうした社会的な役割を果たすためにも、コンクリートという災害に強い素材こそ大切なのではないかと考えています。
— 「モクコンの家」について、デザインのこだわりをお聞かせください。
「古くから人類の友だった木のぬくもりと、
空間の豊かさを持った半屋外スペースです。」
私が携わる建築では、木のぬくもりが大きなテーマです。人類にとって、いちばん古くからの友人として「木」がそばにありました。手触りのあたたかさ、やわらかさをいつも感じられることが大切なのです。今回のモデルでも木材をふんだんに使い、見た目にも手触りとしても、自然のやさしさが感じられることを重視しました。ノキテラスの大屋根とファザード、ハコテラスの木製テラスなど、ぬくもりある木の質感が特色です。
また屋上の庭園スペースや、室内と屋外をつなぐテラスなど、これまでの一般的なテラスやバルコニーを超えた、空間の豊かさを持った半屋外スペースを設けました。どちらも、コンクリートならではの堅牢性によって、半屋外を生活の場として使用することが可能になっています。屋外でも人がゆったりと過ごせることを前提で考え、いろいろなシーンの演出を想定してみました。外気の心地よさを、広がりのあるスペースで感じることができます。特にハコテラスはバルコニー上部の開放感に注目していただきたいと思います。
— 玄関から続くミュージアムは、何を目的に作られましたか。
「住宅と社会をつなぐ空間で、住む人の
創造性が発揮されることを期待しています。」
今回のプランは、アプローチから玄関を入り、そのままミュージアムスペースが連なっているのが大きな特徴です。アフターコロナを見据えてそこにいろいろな人々が集うシーンを思い描きました。仕事をする場、クリエイティブな発想が生まれる場として機能することはもちろん、住宅と社会がつながる際のひとつの形を体験していただけるでしょう。ミュージアムは住む人の創造性の拠点となると同時に、人を招き入れて打合せや交流するスペースにもなる。またその場にいる人がリラックスできることも大切。多目的でフレキシブルに活用できるスペースです。
— ZEHへの対応についてはいかがでしょうか。
「トータルなサステナブルをめざして、
デザインとエンジニアリングを一致させました。」
これからの住宅を考える上で、持続可能性は大きなテーマです。ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に対応しているかどうか、住む人もそこに集う人も、省エネルギーに関心が集まる部分だと思います。今回の家はZEH対応設備だけでなく、木材を多用した住み心地の向上、充分な植栽スペースの想定などトータルにサステナブルであることが特徴です。素材や構造といったエンジニアリングだけでなく、デザインとエンジニアリングが一致している部分をぜひ体験していただきたい。そうした点で、サステナブル住宅のひとつのモデルになるだろうと考えています。
— この新しい邸宅は、一言で表すならどんな家でしょうか。
「暮らしをクリエイティブにする家、自分の創造性を発見する場所です。」
この家は住む人の「自由」を信頼している部分があります。空間はなるべくシンプルに作り、住む人がどんな風にその空間を使いこなしていくのか。住む人の自由、住む人の創造性を活かす場所がたくさんあります。ぜひクリエイティブに住んでいただければと思います。半屋外の空間にいろいろな家具を持ち込んで、いかに日常的な場として使いこなすか。屋外を生活空間に組み入れるのは新しいトレンドでもあり、そのトレンドをご自分のセンスで実現できるのです。そしてミュージアム。自分のコレクション、蔵書などで満たしたクリエイティブなスペースとして、ぜひ自由に使いこなして欲しいと思います。
この家がキャンパスだとすると、みなさんいままで見たことのない絵を描くだろうと期待します。
家が、自分自身の新しい創造性を発見する場所になるのです。
新しい創造力がコンクリート住宅という安心感の土台の上で開花し、サステナブルに社会とつながるでしょう。